電気電子回路 総合問題集

この問題集は電気電子回路の講義(第1回〜第13回)で扱った内容全範囲をカバーする。各問題は「問題設定→方針→ステップバイステップ解答→ポイント」の構成で、問題を解くプロセスそのものを理解できるように書いてある。

凡例

  • 各問題は講義(第1回〜第13回)で扱った範囲・典型パターンを題材にしている
  • 解答は途中式を省略せず丁寧に

問題1:KCL・KVLの基礎(直流回路)

問題設定

下図の回路において、抵抗 を流れる電流 を求めよ。ただし とする。

問題1 回路図

電流の向き

は 節点、 は節点 GND、 は節点 の向きに仮定する。

方針

  1. 節点にKCL(電流則)を適用
  2. 閉ループにKVL(電圧則)を適用
  3. 連立方程式を解く

ポイント

  • KCLは「流入=流出」または「総和=0」のどちらで覚えてもOK
  • KVLは「一巡したら電圧降下の和=起電力の和」
  • 連立方程式は行列で解くと大規模回路でも対応できる

問題2:重ね合わせの理

問題設定

下図の回路で、抵抗 に流れる電流 を重ね合わせの理を用いて求めよ。ただし とする。

問題2 回路図

方針

重ね合わせの理:「複数の電源がある回路の応答は、各電源が単独であるときの応答の総和」

  • Step A:電流源 を開放(断線)して、電圧源 のみで を求める
  • Step B:電圧源 を短絡して、電流源 のみで を求める
  • Step C:

問題3:テブナンの定理(ブリッジ回路)

問題設定

下図のブリッジ回路において、抵抗 に流れる電流 をテブナンの定理を用いて求めよ。ただし とする。

問題3 ブリッジ回路図

方針

  1. を取り外し、端子a-b間を開放したときの電圧 を求める(=テブナン電圧 )
  2. 電圧源を短絡し、端子a-bから見た合成抵抗 を求める

問題4:フェーザ表示とインピーダンス

問題設定

直列回路において、、コイルのリアクタンス 、コンデンサのリアクタンス とする。

(1) 合成インピーダンス を求めよ
(2) インピーダンスの大きさ と偏角 を求めよ
(3) のとき、電流 を求めよ

方針

  • インピーダンス:
  • 大きさ:
  • 偏角:
  • 電流: → (実効値注意)

問題5:交流の有効電力・力率

問題設定

直列回路()に、実効値 の交流電圧を加えたとき、以下の値を求めよ。

(1) インピーダンス とその大きさ
(2) 回路を流れる電流の実効値
(3) 有効電力 、皮相電力 、無効電力
(4) 力率

方針

  • (有効電力)
  • (皮相電力)
  • (無効電力)
  • (力率)

問題6:共振回路のQと共振周波数

問題設定

直列回路において、 とする。

(1) 共振周波数 を求めよ
(2) 共振時の電流 と各素子の電圧 を求めよ
(3) 値を求めよ
(4) 半電力点の周波数 を求めよ


問題7:フィルタ回路の周波数伝達関数

問題設定

直列回路()がある。コンデンサの両端を出力とする場合(LPF)について:

(1) 周波数伝達関数 を求めよ
(2) 遮断周波数 を求めよ
(3) 振幅特性 を について計算せよ
(4) 位相特性 を について求めよ


問題8:RC直列回路の過渡現象(充電過程)

問題設定

直列回路において、 でスイッチを閉じ、電圧 の直流電源を接続した。初期状態ではコンデンサの電荷はゼロとする。

(1) コンデンサ電圧 を求めよ
(2) 回路電流 を求めよ
(3) 時定数 を求め、 における を の倍率で示せ

方針

KVLより微分方程式を立て、変数分離法または未定係数法で解く。


問題9:RLC直列回路の過渡応答(減衰モードの判別)

問題設定

直列回路の放電において、以下の各パラメータについて減衰モードを判別し、電荷 と電流 の概形を答えよ。初期電荷 、初期電流 。

(1)
(2)
(3)
(4)

方針

RLC放電回路の微分方程式:

特性方程式:

判別式 の符号でモードが決まる。


問題10:ダイオードのON/OFF判定

問題設定

下図の回路において、以下の各場合の出力電圧 を求めよ。ただしダイオードの順方向電圧は 、順方向抵抗と逆方向電流は とする。

(1)
(2)
(3)

問題10 ダイオード回路図

方針

ダイオード回路は「ON/OFFを仮定して解く」が鉄則。

  1. 各ダイオードがONかOFFか仮定
  2. ON = の電圧源、OFF = 開放(断線)として扱う
  3. 計算結果で仮定の整合性を確認

問題11:トランジスタ増幅回路のバイアス計算

問題設定

下図の固定バイアス回路において、トランジスタの 、電流増幅率 、, , とする。

(1) ベース電流 、コレクタ電流 を求めよ
(2) コレクタ-エミッタ間電圧 と出力電圧 を求めよ
(3) トランジスタをON状態にするために必要な入力電圧 を求めよ

問題11 トランジスタ増幅回路図


問題12:オペアンプ回路(反転増幅・加算・積分)

問題A:反転増幅回路

下図の反転増幅回路において、、入力 とする。出力電圧 を求めよ。

問題12A 反転増幅回路図


問題B:反転加算回路

、 のとき、出力 を求めよ。


問題C:反転積分回路(波形変換)

の反転積分回路に、振幅 、周波数 の矩形波を入力した。出力波形の概形を説明せよ。



問題13:RC放電回路

問題設定

下図の回路において、スイッチを閉じ十分時間が経過した後、 でスイッチを開いた。抵抗 に流れる電流 を求めよ。

問題13 RC放電回路図

方針

  1. スイッチを開く前の定常状態で、コンデンサの初期電圧 を求める(直流定常ではCは開放)
  2. スイッチを開いた後の回路は と のみの放電回路になる
  3. 微分方程式を立てて解く

ポイント

  • コンデンサの電圧は不連続に変化しない()
  • 直流定常状態ではコンデンサは開放とみなせる
  • 時定数 : が小さいほど放電が速い

問題14:交流電源RLC回路の過渡応答と定常電流

問題設定

下図のRLC直列回路において、 でスイッチを閉じた。、、、、初期電荷 、初期電流 とする。

(1) 電荷 を求めよ
(2) 十分時間が経過した後の定常電流 をフェーザ法で求めよ

問題14 交流電源RLC回路図

方針

  • (1) 非同次2次微分方程式を解く(過渡解 + 特解)
  • (2) 定常状態はフェーザ法でインピーダンスから直接計算

ight) = 2 - j0.5,\Omega$$

電流フェーザ(最大値ベース):

瞬時値に戻す:

答え (2):

ポイント

方法手順適する場面
微分方程式特解→過渡解→初期条件過渡応答も必要なとき
フェーザ法 だけ定常状態だけでOKのとき
  • 特解は入力と同じ周波数の正弦波を仮定して代入
  • 過渡解は で減衰し、定常状態(特解)だけ残る

問題15:RC回路の未定係数法とフェーザ法

問題設定

下図のRC直列回路において、 および のとき、コンデンサの定常状態電圧 を以下の方法で求めよ。

(1) 未定係数法による解法
(2) フェーザ法による解法

問題15 RC回路図

方針

  • 未定係数法: と仮定して微分方程式に代入
  • フェーザ法:複素インピーダンスの分圧で直接計算

ight)}$$

(2) フェーザ法

入力フェーザ:(実効値)

分圧:

振幅:

位相:

瞬時値(最大値ベース):

展開すると未定係数法の結果と一致する。

B. の場合

同様に未定係数法・フェーザ法で求められる。フェーザ法なら:

(同様)、分圧比は同じ:

ポイント

  • 未定係数法とフェーザ法は同じ結果を与える
  • フェーザ法の方が計算が簡潔(複素数の割り算だけ)
  • 未定係数法は過渡解を含めた一般解が必要な場合に有用

問題16:ブリッジ回路のテブナン等価とRC結合

問題設定

下図のブリッジ回路において、ブリッジの平衡条件を満たさない抵抗値を用いた場合を考える。 および のときのコンデンサの定常状態電圧 の求め方を示せ。ただし端子a-b間に対してテブナンの定理を用いて図1(問題15)のRC回路に変形できることを利用せよ。

問題16 ブリッジ→RC回路図

方針

  1. 端子a-bから見たテブナン等価回路を求める
  2. テブナン電圧 とテブナン抵抗 でRC直列回路に置き換え
  3. 問題15の結果を流用する

ight)$$

Step 2:テブナン抵抗

電圧源を短絡し、a-bから見た合成抵抗:

Step 3:等価RC回路

元の回路は 、、 の直列回路と等価になる。

Step 4:問題15の結果を適用

のとき( の振幅はテブナン電圧比倍):

ただし |\dot{V}_{th}| = E_{mi}\left|\dfrac{R_3}{R_1+R_3} - \dfrac{R_4}{R_2+R_4}\ ight|

ポイント

  • ブリッジ回路はテブナンの定理で単純なRC直列回路に変換できる
  • 「複雑な回路でも、特定の2端子から見れば単純な等価回路で置き換え可能」がテブナンの定理の本質
  • 平衡条件 のとき となり、コンデンサに電圧は発生しない

問題17:電力供給と内部抵抗の影響

問題設定

下図の2つの回路について、負荷抵抗 に供給される電力を比較せよ。

問題17 電力供給比較回路図

方針

  • 回路A:電源に直列の1.9kΩ抵抗がある(内部抵抗的なもの)
  • 回路B:電源が直接負荷に接続されている
  • で各々の電力を計算
回路A回路B
電流5mA100mA
電圧0.5V10V
の電力2.5mW1W

倍もの差がつく!

ポイント

  • 電源に直列に入る抵抗(内部抵抗)は負荷への電力供給を大幅に減少させる
  • 最大電力を負荷に伝えるには「内部抵抗 = 負荷抵抗」のインピーダンスマッチングが最適
    (今回の例:内部抵抗1.9kΩ ≫ 負荷100Ω → 極めて非効率)

問題18:オペアンプ2段差動増幅回路

問題設定

下図の2段オペアンプ回路において、出力電圧 を で表せ。また のとき、出力が2つの入力の平均値()になる条件を求めよ。

問題18 オペアンプ2段差動増幅回路図

方針

  1. 左段のオペアンプは反転加算回路 → を求める
  2. 右段のオペアンプは反転増幅回路 → を求める
  3. 全体の入出力関係を合成

ight)}$$

Step 2:右段のオペアンプ(反転増幅回路)

Step 3:全体の合成

ight)
ight] = \frac{R_5R_3}{R_4}\left(\frac{v_1}{R_1} + \frac{v_2}{R_2}
ight)$$

答え:

ight)}$$

Step 4:平均値出力の条件

のとき:

ight)$$

これが になる条件:

特に のとき:

ポイント

  • 多段オペアンプ回路は各段を個別に解析→合成する
  • 各段で「仮想短絡」「仮想開放」の2つが常に成り立つ
  • 全体で見ると は の重み付き和(アナログ演算回路)

Appendix:重要公式一覧

回路素子のV-I関係

素子瞬時値関係フェーザ関係(インピーダンス)
抵抗
コイル
コンデンサ

直流回路の諸定理

  • 重ね合わせの理:各電源単独の応答の総和(電圧源は短絡、電流源は開放)
  • テブナンの定理:任意の2端子は の等価電圧源に置き換え可能
  • ノルトンの定理:任意の2端子は の等価電流源に置き換え可能

交流電力

電力の種類式単位説明
有効電力 W負荷で消費される電力
皮相電力 VA電源から見た見かけの電力
無効電力 var電源と負荷を往復するだけの電力

共振回路

直列共振並列共振
共振角周波数
共振時インピーダンス最小 最大
共振時電流最大 最小
Q値

フィルタの伝達関数(RC回路)

種類回路伝達関数 遮断周波数
LPFC出力
HPFR出力

過渡現象の時定数

回路時定数 または の応答(ステップ入力 )
RC充電
RC放電
RL(電流)
RL(電圧)

オペアンプ基本回路まとめ

回路ゲイン(入出力関係)特徴
反転増幅位相反転あり
非反転増幅位相反転なし、入力インピーダンス∞
ボルテージフォロアインピーダンス変換
差動増幅差動信号の増幅
反転加算複数信号の加算
反転積分波形変換(矩形→三角)
反転微分波形変換(三角→矩形)