20260710_3


参考要素の強い、いろいろな分布を見ていく

  • カイ2乗分布
  • コーシー分布
  • 対数正規分布
  • 分布
  • 分布
  • ベータ分布

区分的に単調な変換
はそのまま変換できるが、は場合分けが必要


カイ2乗分布

分布、などとも

カイ2乗分布の解説

前提知識:区分的に単調な変換

の変換を考える。 を境に:

  • :単調減少
  • :単調増加

)は1価関数(1つのxに対し1つのy)だが、逆変換 は場合分けが必要

  • のとき:
  • のとき:

カイ2乗分布の導出

が標準正規分布 に従うとき、 の分布を求める。

の累積分布関数:

で対称なので、

ここで )と変数変換すると、

よって、

を明記して計算すると、

これは ガンマ分布 の累積分布関数 となる。

この分布を (自由度1の)カイ2乗分布 と呼ぶ。


性質

ガンマ分布の性質から:


自由度 のカイ2乗分布

カイ2乗分布に従う確率変数が 個あるとき、 とし、互いに独立ならば:

ガンマ分布では、尺度母数 が共通なら、和の分布の は個々の分布の の和となる。

右辺は の確率密度関数。これを 自由度 のカイ2乗分布 と呼ぶ。


要約:カイ2乗分布とは

項目内容
定義標準正規分布 の2乗変数の分布
自由度1 のとき
自由度n独立な の和が
ガンマとの関係
期待値(自由度に等しい)
分散
記号 または

コーシー分布の解説

なぜ比の分布を求めるのか

2つの確率変数 から の分布を直接求めるのは難しい。でも、同時分布から周辺分布を引くより、変数変換で一気にやった方が見通しがいい。


2変数の変数変換:ヤコビアン

から への1対1の対応が:

ここで定義される3つの条件:

  1. 逆変換が存在する
  2. 偏導関数が存在し、連続である
  3. ヤコビアン が恒常的に0でない

ヤコビアンとは、変数変換がどのくらい「面積を拡大・縮小」するかを表す行列式だ。

この の逆数を掛けることで、確率密度を正しく変換できる。


比の分布への変換

から という変換を考える。これは:

  • (比)
  • (分母そのまま)

逆変換は:

ヤコビアンは:

恒常的に0ではない。この変換は使える。


標準正規分布からコーシー分布を導く

ともに で独立。同時確率密度関数は:

変数変換して の周辺分布を積分で求めると、最終的に:

これが コーシー分布 だ。


期待値が存在しない

原点対称なのに、期待値 を計算しようとすると:

この積分は発散する。 は対称だから とainenが、 が有限にならないため、期待値は定義できない

モーメント母関数 も存在しない。


でも平均は取れる?

特性関数 を調べると、興味深い結果が出る。

独立な同一のコーシー分布に従う確率変数 の平均:

これも コーシー分布に従う。正規分布では中心極限定理で正規分布に収束するのに、コーシー分布ではそうならない。期待値すら定義されないのに、平均をとっても分布の形が変わらないという、ちょっと不気味な性質だ。


別の導出ルート

のとき、 の分布もコーシー分布になる。

「比の分布」として自然に現れるのと、「円周上の角をランダムに取ったときの正接の分布」として現れる。この二重性もコーシー分布の不思議なところだ。


まとめ:コーシー分布の特徴

項目内容
定義
由来(独立な標準正規変数の比)
対称性原点対称
期待値存在しない(積分発散)
分散存在しない
モーメント母関数存在しない
平均の分布コーシー分布のまま(中心極限定理が働かない)
別の由来

対数正規分布の解説

何が起きるか

が正規分布 に従うとき、 の分布を 対数正規分布 と呼ぶ。記号は

注意が必要なのは、この名前の読み方だ。「対数変換を施すと正規分布になる分布」であって、「正規分布の対数を取った分布」ではない。 そのものは正規分布に従わない。 という関係があるだけだ。


なぜ「指数変換」なのか

正規分布をそのまま扱うと、値域は になる。でも現実の很多の現象は負にならない。収入も、サービス時間も、物体のサイズも、0以下にはならない。

をかけることで、正規分布の持つ「対称性」と「中心極限定理との親和性」を保ったまま、値域を に押し込める。この変換が起きる確率分布が対数正規分布だ。


確率密度関数

変数変換 より、 を使って:

の二乗が分子にあるから、(すなわち )のあたりで峰值を持つ。分布は右に長い尻尾を引く。


どこに出てくるか

大部分はあまり大きくないが、たまに大きい値が生じるような現象のモデルだ。

  • 収入の分布
  • 店舗のサービス時間
  • 物のサイズ(生物の個体差など)

右に歪んだ分布。中央値は だが、平均はそれより大きい。大きな値が稀にでも混ざると、平均を引き上げる効果が強い。


モーメントは計算できる

分散は を直接求めるより、 から攻める方が簡単になる。

よって、

平均も分散も有限。 に比例する形で出てくる。


モーメント母関数は存在しない

正規分布にはモーメント母関数があった。でも対数正規分布には存在しない。

この積分は収束しない。分布の右尻尾が指数的に減衰するより速く重いためだ。

コーシー分布と似ている。コーシー分布は期待値が定義できなかったが、対数正規分布は期待値も分散もある。ただモーメント母関数だけは使えない。モーメントの計算は特性関数か、直接の積分に頼る必要がある。


まとめ:対数正規分布の特徴

項目内容
定義 のとき
値域
右に歪んだ分布
期待値
分散
モーメント母関数存在しない
由来正規分布に指数変換をしたもの

F分布の解説

何が起きるか

2つの確率変数 が互いに独立に、それぞれ自由度 のカイ2乗分布 に従うとき、:

カイ2乗分布のを정리したものがF分布。 は第1自由度、 は第2自由度と呼ぶ。


なぜ「自由度を割る」のか

カイ2乗分布 個の独立な標準正規変数の2乗和だから、平均的に 付近の値を取る。 にすることで、「1個あたりの平均的な2乗和」に正規化される。分子と分母の両方を割ることで、比としてのスケールを揃えている。


導出の流れ

の同時確率密度関数は、 の積:

ここで変数変換:

逆変換は:

ヤコビアンは 。この変換で同時確率密度関数を書き直し、 の周辺分布を積分で求めると、最終的に:

はベータ関数。


期待値と分散

積分から直接求めるのではなく、カイ2乗分布の性質から間接的に計算する。

が大きいほど に近づく。分子と分母の「1個あたりの平均的な2乗和」の比なのだから、本来なら1付近に集中してほしい。 が小さいと分母の揺らぎが大きくて、平均からずれる。


逆にひっくり返すと

分子と分母を入れ替えると、自由度も入れ替わる。これはF分布の定義を正確に覚えておく必要がある箇所だ。


まとめ:F分布の特徴

項目内容
定義(独立なカイ2乗変数の比)
パラメータ第1自由度 、第2自由度
期待値
分散上記の式(
用途分散の比の検定、ANOVA

t分布の解説

何が起きるか

で独立のとき、:

分子は標準正規、分母はカイ2乗分布を自由度で割ったものの平方根。正規分布の標本平均を、標本標準偏差で割ったときに現れる分布だ。


なぜこれが重要なのか

実際の統計では、母分散 を知らない。知らないのに を使うわけにはいかない。代わりに標本分散 で置き換えると:

この が従うのがt分布だ。母分散を知らないという「不確実性」が、分布の形に反映される。


確率密度関数と性質

項目内容
期待値
分散
に収束

自由度 が大きくなると、標本分散が母分散に近づき、t分布は標準正規分布に近づく。 が小さいときは正規分布より「尻尾が厚い」。不確実性が大きい分、極端な値が起こりやすい。


カイ2乗分布 → F分布 → t分布のつながり

  • カイ2乗分布:標準正規変数の2乗和
  • F分布:カイ2乗分布の比
  • t分布:正規分布をカイ2乗分布の平方根で割ったもの

F分布はカイ2乗を2つ使い、t分布は正規を1つとカイ2乗を1つ使う。すべての土台にはカイ2乗分布がある。

ベータ分布の解説

何が起きるか

で独立のとき、:

ガンマ分布2つの和の中の比。尺度母数 が共通だから消え、形状母数 だけが残る。値域は になる。


なぜ「和の中の比」なのか

F分布は と「比」だった。ベータ分布は と「和で割る」。この違いで、値域が から に変わる。

2つのガンマ変数のうち、全体の中でどれくらいの割合を占めるか。这就是ベータ分布が「割合」の分布と呼ばれる所以だ。


確率密度関数

はベータ関数:

なら左に偏り、 なら右に偏り、 なら対称。 なら一様分布 になる。


モーメント

が大きいほど分散が小さくなる。 は「事前確率の強さ」を表すと解釈できる。ベイズ統計では、事前分布としてよく使われる。


ガンマ分布からの導出

を持つ2つのガンマ変数から、ベータ分布を導くには変数変換:

逆変換:

ヤコビアンを計算して、 を積分で消すと、 の周辺分布がベータ分布になる。詳細な計算は省略されるが、思路はF分布と同じ——同時確率密度関数を書き直して、1つ积み消すだけだ。


まとめ:ベータ分布の特徴

項目内容
定義(独立なガンマ変数の和の中の比)
パラメータ形状母数
値域
期待値
分散
特殊ケース → 一様分布
用途ベイズ統計の事前分布、確率の確率のモデル

全体のつながり

  1. カイ2乗分布:標準正規の2乗。土台
  2. コーシー分布:正規の比。期待値なし
  3. 対数正規分布:正規に指数変換。右に歪む
  4. F分布:カイ2乗の比。分散の検定に
  5. t分布:正規 ÷ √(カイ2乗/自由度)。母分散未知の検定に
  6. ベータ分布:ガンマの和の中の比。割合のモデル

すべては正規分布とカイ2乗分布から始まっている。正規分布が2乗されたり、比にされたり、指数変換されたりして、いろいろな分布が生まれる。