過渡現象 (Transient Phenomena) とは
回路の状態が急に変わったとき(スイッチON/OFF)、電圧・電流は瞬間的に新しい値にジャンプできない。
- コイルの電流 = 連続(急に変わらない)
- コンデンサの電圧 = 連続(急に変わらない)
この「古い安定状態 → 新しい安定状態への移り変わりの間の変化」を過渡現象と呼ぶ。
落ち着いた後の状態 → 定常状態 (Steady State)
ステップ応答 (Step Response) とは
ステップ入力: で 0V → 一定電圧 にジャンプする入力
この入力を加えたときの出力の時間変化 = ステップ応答
→ 過渡現象の代表的な例
RC直列回路のステップ応答(C出力)
回路:
t=0でスイッチON
──╲── R ──┬──
i(t) │
─── C
─── v_C(t)
│
─────────────┴──
微分方程式を使う理由(Q=CVから辿る)
持ってる道具
- キルヒホッフの電圧則(KVL):
- オームの法則:
- コンデンサの式:
- 電流の定義:
ルートA:電流 i(t) を未知数にする
KVLにオームの法則を代入:
を で表す():
両辺を で微分して積分を消す:
→ $$
\boxed{\frac{di}{dt} = -\frac{1}{CR},i}
\boxed{RC\frac{dv_C}{dt} + v_C = E}
### 2つのルートの関係 Q=CV と i=dQ/dt で i と v_C が微分積分で結ばれているから、どっちのルートでも**微積が出てくる**。これが過渡現象では避けられない。 ## 微分方程式の立て方(2通りの方法) ### 解法①:電流 i(t) を求める キルヒホッフ: $v_R + v_C = E$ → $Ri(t) + \dfrac{1}{C}\int i(t)dt = E$ 両辺を $t$ で微分 → $\displaystyle R\dfrac{di(t)}{dt} + \dfrac{1}{C}i(t) = 0$ → $\displaystyle \dfrac{di(t)}{dt} = -\dfrac{1}{CR}i(t)$ **変数分離形** → 解くと:i(t) = i(0),e
### 解法②:コンデンサ電圧 v_C(t) を求める $i(t) = C\dfrac{dv_C(t)}{dt}$ を代入 → $\displaystyle RC\dfrac{dv_C(t)}{dt} + v_C(t) = E$ → $\displaystyle \dfrac{dv_C(t)}{dt} + \dfrac{1}{CR}v_C(t) = \dfrac{E}{CR}$ 解くと:v_C(t) = E{1 - e
## 各素子の電圧・電流 初期条件:$t=0$ で $v_C(0)=0$ より $i(0)=E/R$\begin{aligned}
i(t) &= \dfrac{E}{R},e^{-t/CR} \quad\text{(電流)}\[4pt]
v_R(t) &= R,i(t) = E,e^{-t/CR} \quad\text{(抵抗の電圧)}\[4pt]
v_C(t) &= E{1 - e^{-t/CR}} \quad\text{(コンデンサの電圧)}
\end{aligned}
i(t) = \dfrac{E}{R}{1 - e
## 各素子の電圧・電流 初期条件:$t=0$ で $i(0)=0$\begin{aligned}
i(t) &= \dfrac{E}{R}{1 - e^{-Rt/L}} \quad\text{(電流)}\[4pt]
v_R(t) &= R,i(t) = E{1 - e^{-Rt/L}} \quad\text{(抵抗の電圧)}\[4pt]
v_L(t) &= L\dfrac{di(t)}{dt} = E,e^{-Rt/L} \quad\text{(コイルの電圧)}
\end{aligned}
f_c = \dfrac{1}{2\pi CR} = \dfrac{1}{2\pi\tau} \quad\text{→ 遮断周波数と時定数は逆数の関係!}
- **低域通過フィルタ (LPF)** = **積分回路** - $f \gg f_c$($t \ll \tau$)のとき:$v_C(t) \approx \dfrac{1}{CR}\int e(t)dt$ - **高域通過フィルタ (HPF)** = **微分回路** - $f \ll f_c$($t \gg \tau$)のとき:$v_R(t) \approx CR\dfrac{de(t)}{dt}$ > 今までの「周波数応答(フィルタ)」と今回の「時間応答(過渡現象)」は、時定数 $\tau$ を介してつながってる! --- # RLC直列回路のステップ応答(2次系) 回路: ``` ──╲── R ──── L ────┬── │ ─── C ─── │ ────────────────────┴── ``` ## 微分方程式 キルヒホッフ: $v_L + v_R + v_C = E$L\dfrac{di(t)}{dt} + Ri(t) + \dfrac{1}{C}\int i(t)dt = E
$i(t) = \dfrac{dq(t)}{dt}$ を使うと:L\dfrac{d^2q(t)}{dt^2} + R\dfrac{dq(t)}{dt} + \dfrac{1}{C}q(t) = E
$q(t) = Cv_C(t)$ より $v_C(t)$ の式にもできる。 ## 特性方程式(斉次微分方程式の解) $i(t) = ke^{st}$ と仮定 → $Ls^2 + Rs + \dfrac{1}{C} = 0$s = \dfrac{1}{2L}\left(-R \pm \sqrt{R^2 - \dfrac{4L}{C}}\right)
## 減衰係数と固有角周波数 - **減衰係数**: $\displaystyle \alpha = \dfrac{R}{2L}$ - **固有角周波数**: $\displaystyle \omega_0 = \dfrac{1}{\sqrt{LC}}$ → $s = -\alpha \pm \sqrt{\alpha^2 - \omega_0^2}$ ルートの中身の符号で**3パターン**! --- ## 3つの減衰モード ### ① 過減衰 (Overdamped) — $R > 2\sqrt{L/C}$ 特性根:**相異なる2つの実根** $s_1 = \alpha + \beta$, $s_2 = \alpha - \beta$i(t) = \dfrac{E}{L}\dfrac{1}{\beta}e^{\alpha t}\sinh(\beta t)
振動せず、ゆっくり減衰。定常状態になるまで時間がかかる。 ### ② 臨界減衰 (Critically Damped) — $R = 2\sqrt{L/C}$ 特性根:**重根** $s = \alpha$i(t) = \dfrac{E}{L},t,e^{\alpha t}
振動せず、最も速く定常状態に落ち着く。 ### ③ 不足減衰 (Underdamped) — $R < 2\sqrt{L/C}$ 特性根:**共役複素根** $s = \alpha \pm j\beta$i(t) = \dfrac{E}{L}\dfrac{1}{\beta}e^{\alpha t}\sin(\beta t)
振動(リンギング)しながら減衰。定常状態になるまで時間がかかる。 --- ## 3パターンの比較 | | 過減衰 | 臨界減衰 | 不足減衰 | |---|---|---|---| | 条件 | $R > 2\sqrt{L/C}$ | $R = 2\sqrt{L/C}$ | $R < 2\sqrt{L/C}$ | | 根 | 異なる実根2つ | 重根 | 共役複素根 | | 波形 | 振動なし・遅い | 振動なし・最速 | 振動しながら減衰 | | 電流の様子 | ダラダラ落ち着く | ピタッと落ち着く | ビョンビョン揺れる | --- # 第10章 ダイオードを含んだ回路およびその動作点 ## ダイオードとは **ダイオード**:電気の流れを「一方通行」にする性質を持った素子(半導体) | 端子 | 名称 | 型 | |---|---|---| | アノード (Anode) | 陽極 | p型 | | カソード (Cathode) | 負極 | n型 | 回路記号: ``` ──▶|── A K ``` ### バイアス方向 - **順方向電圧 (Forward Bias)**:アノード側 ⇒ 正電圧、カソード側 ⇒ 負電圧 - → 電流が流れる(≈ 短絡) - シリコンダイオードの順方向電圧降下:$V_F \approx 0.7\,\text{V}$ - **逆方向電圧 (Reverse Bias)**:アノード側 ⇒ 負電圧、カソード側 ⇒ 正電圧 - → 電流が流れない(≈ 開放) --- ## ツェナーダイオード (Zener Diode) 通常のダイオードとは逆に、**逆方向電圧**で利用する特殊なダイオード。 - 閾値電圧(ツェナー電圧)を超えると**急激に電流が増加** - 閾値電圧以上の電気抵抗は極めて小さい - **降伏電圧(ツェナー電圧)$V_Z$** で一定電圧を維持 → **定電圧源**として使える --- ## 負荷線 (Load Line) と動作点 (Operating Point) ### 回路方程式 ダイオードと抵抗 $R$ の直列回路に電源 $E$ を接続:\begin{aligned}
E &= V_D + R,I_D \
I_D &= \frac{E - V_D}{R}
\end{aligned}