全体の流れ:問題の解き方のロードマップ
過渡現象の問題は、基本的に以下の手順で解く:
1. 初期条件の確定(t=0 の状態)
→ [[20260622_1#各素子の電圧・電流|コンデンサ]]の電圧 v(0)、[[20260622_1#各素子の電圧・電流|インダクタ]]の電流 i(0)
→ [[20260622_1#各素子の電圧・電流|コンデンサ]]は電圧が不連続に変化しない
→ [[20260622_1#各素子の電圧・電流|インダクタ]]は電流が不連続に変化しない
2. 微分方程式の構築
→ 基爾フホッフの法則(KCL, KVL)を適用
→ [[20260622_1#各素子の電圧・電流|コンデンサ]]: i = C dv/dt
→ [[20260622_1#各素子の電圧・電流|インダクタ]]: v = L di/dt
3. 解の形式の決定
→ 特性方程式の根の種類で決まる
→ 過減衰(実根、異なる): Ae^{λ₁t} + Be^{λ₂t}
→ 臨界減衰(実根、重根): (A + Bt)e^{λt}
→ 不減衰(純粋虚根): A cos ωt + B sin ωt
→ 不足減衰(複素共役根): e^{αt}(A cos βt + B sin βt)
4. 係数の決定
→ 初期条件を代入して A, B を求める
方針建てのフレームワーク
問題を解く前に、まず「この問題はどのパターンか」を判断する:
Q1: 電源は直流?交流?なし?
├─ 直流 → 定常状態で[[20260622_1#各素子の電圧・電流|コンデンサ]]=開放、[[20260622_1#各素子の電圧・電流|インダクタ]]=短絡
├─ 交流 → [[20260525_1|フェーザ]]法が便利(定常状態のみ)
└─ なし → 過渡現象のみ(放電・減衰)
Q2: 回路の構成は?
├─ RCのみ → 1次微分方程式(指数減衰)
├─ RLC → 2次微分方程式(特性方程式で4パターンに分岐)
├─ ダイオード → オン/オフの判定から回路を簡略化
└─ トランジスタ → オン状態の条件から電流を求める
Q3: 何を聞かれている?
├─ 時間の関数 → 微分方程式を解く
├─ 定常状態だけ → フェーザ法 or 直流定常
└─ 電力 → P = VI = I²R = V²/R
演習問題1:RC放電回路
問題設定
スイッチを閉じて十分時間が経過した後、スイッチを開いた瞬間(t=0)からの放電過程を求める。
+---C---v---+ スイッチを開く前:
| | E → R1 → R2 の直列回路
E R1 R2 コンデンサは直流定常状態で開放
| | したがって R2 の両端電圧が初期電圧
+-----------+ v₀ = R2/(R1+R2) · E
方針建て
Step 1: 「スイッチを開く前」の定常状態を考える
→ コンデンサは直流で電流を流さない → 開放と同じ
→ R1とR2が直列 → 分圧法則で v₀ を求める
Step 2: 「スイッチを開いた後」の回路を描く
→ EとR1が切り離される
→ 残るのはCとR2だけ
Step 3: 微分方程式を立てる
→ コンデンサの電流: i = -C dv/dt(放電なので負)
→ オームの法則: i = v/R2
→ これを等式につなぐ
Step 4: 微分方程式を解く
→ 1次同次: dv/dt + v/(R2C) = 0
→ 解: v(t) = v₀ exp(-t/(R2C))
Step 5: 電流を求める
→ i(t) = v(t)/R2
計算のステップバイステップ
Step 1: 初期条件(t=0⁻ の定常状態)
スイッチを閉じて十分経つと、コンデンサは完全に充電されて直流電流は流れなくなる。このとき回路は直流定常状態なので、コンデンサは「断線」と同じ状態。
電流の流れ: E → R1 → R2 → GND(コンデンサは通過しない)
R2の両端電圧 = コンデンサの電圧
v₀ = R2/(R1+R2) · E (分圧法則)
Step 2: スイッチを開いた後の回路(t≥0)
スイッチを開くと、電源EとR1が切り離される。残るのはコンデンサCと抵抗R2だけの放電回路。
+---C---v---+
| |
| R2 | コンデンサが R2 を通じて放電
| |
+-----------+
Step 3: 微分方程式を立てる
コンデンサから流れ出る電流は、電荷の減少率に等しい:
一方、オームの法則より:
この2つを等号で結ぶ:
Step 4: 微分方程式を解く
これは1次同次線形微分方程式。解の形は:
Step 5: 電流を求める
計算のポイント
- 時間定数 が重要。 が大きいほど放電が遅い
- のとき、電圧は初期値の に減少
- でほぼ放電完了(99.3%減少)
演習問題2.1:RLC放電回路の過渡応答
問題設定
RLC直列回路で、t=0でスイッチを閉じた。電荷 q(t) と電流 i(t) を求める。
+---C---q---+
| |
L R i i = dq/dt
| |
+-----------+
方針建て
Step 1: 基爾フホッフの電圧法則を適用
→ L, R, C の電圧降下の合計 = 0
→ v_L + v_R + v_C = 0
Step 2: 電圧を電荷 q(t) で表す
→ v_C = q/C
→ v_R = R · dq/dt
→ v_L = L · d²q/dt²
Step 3: 2次同次線形微分方程式を構築
→ L d²q/dt² + R dq/dt + (1/C)q = 0
Step 4: 特性方程式を解く
→ Lλ² + Rλ + 1/C = 0
→ 解の公式で λ を求める
Step 5: 根の種類で解の形を決める
→ 過減衰/臨界減衰/不減衰/不足減衰
Step 6: 初期条件で係数を決める
→ q(0) = Q₀, i(0) = 0
共通の微分方程式
RLC直列回路の基爾フホッフの電圧法則より:
初期条件:、
特性方程式の解法
解の公式:
判別式 の符号で解の形が決まる:
| パターン | 条件 | 根の形 | 解の形式 |
|---|---|---|---|
| 過減衰 | 実根 | ||
| 臨界減衰 | 重根 | ||
| 不減衰 | かつ | 純粋虚根 | |
| 不足減衰 | かつ | 複素共役 |
(1) 過減衰:L=1, R=7, C=0.1, q₀=3
Step 1: 特性方程式を立てる
に代入:
Step 2: 特性方程式を解く
因数分解:
判別式: → 過減衰
Step 3: 一般解を書く
過減衰の解の形:
Step 4: 電流の式を求める(時間微分)
Step 5: 初期条件を代入して連立方程式を立てる
より:
より:
Step 6: 連立方程式を解く
(2)式より: →
(1)式に代入: → →
確認: ✓、 ✓
解答:
計算のコツ
- 特性方程式を因数分解(解の公式でもOK)
- 一般解の形を書く
- 時間微分して電流の式を求める
- 初期条件を2つ代入して連立方程式を解く
- 答えを確認(t=0でq=3, i=0 になっているか)
(2) 臨界減衰:L=1, R=2, C=1, q₀=1
Step 1: 特性方程式を立てる
Step 2: 特性方程式を解く
→ (重根)
判別式: → 臨界減衰
Step 3: 一般解を書く
臨界減衰の解の形:
Step 4: 電流の式を求める(積の微分則)
Step 5: 初期条件を代入
より:
より:
確認: ✓、 ✓
解答:
臨界減衰の特徴
過減衰と不足減衰の境界。最も速く減衰しながらも振動しない。
(3) 不減衰(R=0):L=2, R=0, C=0.5, q₀=2
Step 1: 特性方程式を立てる
Step 2: 特性方程式を解く
→ (純粋虚根)
判別式: かつ → 不減衰
Step 3: 一般解を書く
不減衰の解の形:
Step 4: 電流の式を求める
Step 5: 初期条件を代入
より:
より:
確認: ✓、 ✓
解答:
不減衰の物理的意味
抵抗がないため、エネルギーの損失がなく永久に振動し続ける。角周波数 。
(4) 不足減衰:L=2, R=4, C=0.1, q₀=2
Step 1: 特性方程式を立てる
Step 2: 特性方程式を解く
両辺を2で割る:
解の公式:
判別式: かつ → 不足減衰
Step 3: 一般解を書く
不足減衰の解の形:
、 より:
Step 4: 電流の式を求める(積の微分則)
整理:
Step 5: 初期条件を代入
より:
より:
確認: ✓
✓
解答:
不足減衰の特徴
減衰振動。指数関数的に振幅が減衰しながら振動する。実際の回路で最もよくあるパターン。
演習問題2.2:交流電源を加えたRLC回路
問題設定
RLC直列回路に交流電源 を加えた。電荷 q(t) を求める。
- R=2Ω、L=1H、C=0.2F(1/C=5)、q₀=1C
方針建て
交流電源を加えた場合の微分方程式:
→ 非同次線形微分方程式になる
→ 一般解 = 過渡解(同次方程式の解) + 特解(非同次方程式の解)
Step 1: 特解を求める(定常応答)
→ 入力と同じ周波数の解を仮定: Q(t) = Ac cos ωt + As sin ωt
→ 微分方程式に代入して係数を求める
Step 2: 過渡解を求める(自由応答)
→ 同次方程式(右辺=0)を解く
→ これは演習問題2.1と同じ
Step 3: 一般解 = 過渡解 + 特解
Step 4: 初期条件で過渡解の係数を決める
微分方程式
Step 1: 特解 Q(t) を求める
交流電源に対する定常応答。入力と同じ周波数の解を仮定:
微分:
微分方程式に代入:
cos 2t と sin 2t の係数で整理:
- cos 2t の係数:
- sin 2t の係数:
2式目より を1式目に代入:
Step 2: 過渡解を求める
同次方程式の特性方程式:
解の公式:
過渡解:
Step 3: 一般解全体
Step 4: 初期条件で k_c, k_s を求める
電流を求める(一般解を微分):
初期条件の代入:
より:
より:
を代入: →
確認: ✓
…
訂正:初期条件の代入を再確認。 なので:
より → ✓
解答:
交流応答のポイント
- 特解は入力と同じ周波数を仮定(係数を未知として代入)
- 過渡解は同次方程式の解(指数減衰 + 振動)
- 一般解 = 過渡解 + 特解
- 初期条件で過渡解の係数を決める
- 十分な時間が経つと過渡解は消え、特解(定常状態)だけが残る
演習問題2.3:定常電流の求まり方
方針建て
定常電流 I(t) を求める方法は2つ:
解法A: [[20260525_1|フェーザ]]法(複素インピーダンス)
→ 計算がシンプル(割るだけ)
→ 定常状態だけ分かればOK
解法B: 微分方程式の特解から
→ 演習問題2.2で求めた Q(t) を微分するだけ
→ 過渡解も必要ならこっち
→ 試試験ではフェーザ法の方が早い
解法A: 複素インピーダンス(フェーザ法)
交流電源 → 最大値 、角周波数
Step 1: 複素インピーダンスを計算
パラメータを代入:、、
Step 2: 電流の複素振幅を求める
オームの法則:
分母を有理化(共役複素数を掛ける):
Step 3: 時系列に戻す
より:
- 実数部(cosの係数)= 8
- 虚数部(sinの係数)= 2 → 位相が進む成分なので
解法B: 微分方程式の特解から
演習問題2.2で求めた電荷の特解 を微分:
解法の比較
| フェーザ法 | 微分方程式 | |
|---|---|---|
| 手順 | 複素インピーダンスを計算して割るだけ | 特解を仮定→代入→係数比較→微分 |
| 計算量 | 少ない | 多い |
| 適す場面 | 定常状態だけ分かればOK | 過渡解も必要なとき |
フェーザ法の威力
定常状態だけ分かれば、微分方程式を解かずに複素数の割り算で求められる。実用上はこっちを使うことが多い。
演習問題3.1改:ダイオード回路
問題設定
300Ω
v2 ----[R]----+---- v0
|
D1 | D2
↓ | ↓
v1 ----[R]----+---- 300Ω
|
4kΩ
|
GND
- +5V電源、ダイオード順方向電圧 VF = 0.7V
- 順方向抵抗と逆方向電流は0
方針建て
[[20260622_1#第10章 ダイオードを含んだ回路およびその動作点|ダイオード]]回路の解き方:
Step 1: ダイオードを「外して」回路を描く
→ ダイオードのアノード-カソード間の電圧差を計算
Step 2: 各ダイオードのオン/オフを判定
→ アノード電圧 - カソード電圧 ≥ VF(0.7V) → オン
→ アノード電圧 - カソード電圧 < VF → オフ
Step 3: オンのダイオードを0.7Vの電池に置き換えて回路を解く
→ オン: 0.7Vの電圧降下(電池と考える)
→ オフ: 電流が流れない(断線と考える)
Step 4: 出力電圧 v₀ を求める
(1) v₁ = v₂ = 5V
Step 1: ダイオード判定
両方の入力が5Vなので、アノードもカソードも同じ電位。
- D1: アノード = 5V、カソード ≒ 5V → 電圧差 ≈ 0V < 0.7V → オフ
- D2: 同様に オフ
Step 2: 回路を解く
両方オフなので電流は流れない。電源電圧そのまま:
(2) v₁ = 5V、v₂ = 0V
Step 1: ダイオード判定
- D1: アノード = 5V、カソード = 0V → 電圧差 = 5V > 0.7V → オン
- D2: アノード = 0V、カソード ≒ 5V → 電圧差 < 0 → オフ
Step 2: 回路を解く
D1のみオン(0.7Vの電池に置き換える):
電流:
(3) v₁ = v₂ = 0V
Step 1: ダイオード判定
- D1: アノード = 5V、カソード = 0V → オン
- D2: アノード = 5V、カソード = 0V → オン
Step 2: 回路を解く
両方オン。VF = 0.7V:
電流:
ダイオード問題のコツ
- まずダイオードを「外して」電圧を見る
- アノード側の電圧がカソード側より0.7V以上高ければオン
- オンのダイオードは0.7Vの電圧降下を持つ電池と考える
演習問題3.2改:トランジスタ基本増幅回路
問題設定
VCC = 12V
|
RL = 1kΩ
|
+---- Vo
|
C -- B
| |
RB VBE
10kΩ |
| |
Vi GND
β = 100
方針建て
[[20260629_1#トランジスタによる増幅回路|トランジスタ]]回路の解き方:
Step 1: 「オン状態」の条件を確認
→ コレクターエミッタ間電圧 ≈ 0
→ コレクター電流が最大値: IC = VCC/RL
Step 2: βを使ってベース電流を求める
→ IB = IC/β
Step 3: ベース回路に[[20260420_1#電圧及び電流|キルヒホッフ]]を適用
→ Vi = IB × RB + VBE
→ VBE = 0.7V(シリコンダイオード)
Step 4: Vi を計算
計算のステップバイステップ
Step 1: オン状態の条件
トランジスタがオン(飽和)状態とは、コレクターエミッタ間の電圧がほぼゼロになる状態。
このときコレクター電流は最大値に達する:
Step 2: ベース電流を求める
より:
Step 3: 入力電圧を求める
ベース-emitter間には VF = 0.7V がかかる。キルヒホッフの電圧法則:
トランジスタ回路の解き方
- まず「オン状態ならコレクター電流はいくらか」を で求める
- でベース電流を求める
- ベース回路にキルヒホッフを適用して Vi を求める
演習問題4.4改:電力供給の比較
問題設定
2つの回路で、負荷抵抗 に供給される電力を比較せよ。
回路A: 回路B:
vi vi
| |
1.9kΩ |
| +--- 100Ω (RL)
+--- RL(100Ω) |
| |
10V 10V
方針建て
[[20260608_1#電力とは?|電力]]の計算: P = VI = I²R = V²/R
回路A: 直列抵抗が大きい → 電流が少ない → 電力が小さい
回路B: 直列抵抗なし → 電流が大きい → 電力が大きい
→ 電源の内部抵抗(直列抵抗)が負荷への電力供給に大きく影響
回路Aの計算
Step 1: 全抵抗を求める
Step 2: 電流を求める
Step 3: の電圧を求める
Step 4: 電力を求める
回路Bの計算
Step 1: 電流を求める
Step 2: 電力を求める
比較
| 回路A | 回路B | |
|---|---|---|
| 電流 | 5mA | 100mA |
| RL電圧 | 0.5V | 10V |
| 電力 | 2.5mW | 1W |
教訓
直列抵抗が大きいと、負荷に供給される電力が大幅に減少する。回路設計では電源の内部抵抗と負荷のバランスが重要。
演習問題4.5改:オペアンプ差動増幅回路
問題設定
v1 --[R1]--+--[R3]--+--[R5]-- vo
| |
R2 R4
| |
v2 --[R2]--+ +-- GND
方針建て
2段のオペアンプ回路:
Step 1: 左側のオペアンプを解析
→ 反転加算増幅回路
→ v3 = -(R2/R1)(v1 + v2)
Step 2: 右側のオペアンプを解析
→ 反転増幅回路
→ vo = -(R5/R4)v3
Step 3: 合成する
→ vo = (R5·R2)/(R4·R1) · (v1 + v2)
Step 4: 条件を満たす抵抗比を求める
(1) 入力v1, v2と出力voの関係
Step 1: 左側のオペアンプ(反転加算増幅回路)
仮想接地:
(-)端子に流れ込む電流の合計 = 0:
Step 2: 右側のオペアンプ(反転増幅回路)
仮想接地:
Step 3: 合成
(2) R₁ = R₂ = R のとき、出力が2つの入力の平均値になる条件
平均値:
のとき:
これを にするには:
オペアンプ回路の解き方まとめ
- 各オペアンプを個別に解析
- 「仮想短絡」:
- 「仮想開放」: 入力端子に電流は流れない
- ノードでキルヒホッフの電流法則を適用
- 位相反転に注意(反転増幅は符号が変わる)