20260615_1


過渡現象 (Transient Phenomena) とは

回路の状態が急に変わったとき(スイッチON/OFF)、電圧・電流は瞬間的に新しい値にジャンプできない。

  • コイルの電流 = 連続(急に変わらない)
  • コンデンサの電圧 = 連続(急に変わらない)

この「古い安定状態 → 新しい安定状態への移り変わりの間の変化」を過渡現象と呼ぶ。

落ち着いた後の状態 → 定常状態 (Steady State)

ステップ応答 (Step Response) とは

ステップ入力 で 0V → 一定電圧 にジャンプする入力

この入力を加えたときの出力の時間変化 = ステップ応答
→ 過渡現象の代表的な例


RC直列回路のステップ応答(C出力)

回路:

t=0でスイッチON
──╲── R ──┬──
      i(t)  │
           ─── C
           ─── v_C(t)
             │
─────────────┴──

微分方程式を使う理由(Q=CVから辿る)

持ってる道具

  1. キルヒホッフの電圧則(KVL)
  2. オームの法則
  3. コンデンサの式
  4. 電流の定義

ルートA:電流 i(t) を未知数にする

KVLにオームの法則を代入:

で表す():

両辺を で微分して積分を消す:

→ $$
\boxed{\frac{di}{dt} = -\frac{1}{CR},i}

### ルートB:コンデンサ電圧 v_C(t) を未知数にする $i$ を $v_C$ の微分で表す: $Q = Cv_C$ より $\displaystyle i = \frac{dQ}{dt} = \frac{d}{dt}(Cv_C) = C\frac{dv_C}{dt}$ これを KVL $Ri + v_C = E$ に代入:

\boxed{RC\frac{dv_C}{dt} + v_C = E}

### 2つのルートの関係 Q=CV と i=dQ/dt で i と v_C が微分積分で結ばれているから、どっちのルートでも**微積が出てくる**。これが過渡現象では避けられない。 ## 微分方程式の立て方(2通りの方法) ### 解法①:電流 i(t) を求める キルヒホッフ: $v_R + v_C = E$ → $Ri(t) + \dfrac{1}{C}\int i(t)dt = E$ 両辺を $t$ で微分 → $\displaystyle R\dfrac{di(t)}{dt} + \dfrac{1}{C}i(t) = 0$ → $\displaystyle \dfrac{di(t)}{dt} = -\dfrac{1}{CR}i(t)$ **変数分離形** → 解くと:

i(t) = i(0),e

### 解法②:コンデンサ電圧 v_C(t) を求める $i(t) = C\dfrac{dv_C(t)}{dt}$ を代入 → $\displaystyle RC\dfrac{dv_C(t)}{dt} + v_C(t) = E$ → $\displaystyle \dfrac{dv_C(t)}{dt} + \dfrac{1}{CR}v_C(t) = \dfrac{E}{CR}$ 解くと:

v_C(t) = E{1 - e

## 各素子の電圧・電流 初期条件:$t=0$ で $v_C(0)=0$ より $i(0)=E/R$

\begin{aligned}
i(t) &= \dfrac{E}{R},e^{-t/CR} \quad\text{(電流)}\[4pt]
v_R(t) &= R,i(t) = E,e^{-t/CR} \quad\text{(抵抗の電圧)}\[4pt]
v_C(t) &= E{1 - e^{-t/CR}} \quad\text{(コンデンサの電圧)}
\end{aligned}

## 時定数 $\tau = CR$ 「どれだけ速く過渡現象が落ち着くか」の指標。 | 経過時間 | $v_C(t)/E$ | 備考 | |---|---|---| | $1\tau$ | $1 - e^{-1} \approx 63.2\%$ | | | $3\tau$ | $1 - e^{-3} \approx 95.0\%$ | ほぼ定常 | | $5\tau$ | $1 - e^{-5} \approx 99.3\%$ | 定常状態とみなす | > $\tau$ が小さいほど速く落ち着く --- # RL直列回路のステップ応答(R出力) 回路: ``` ──╲── R ──┬── i(t) │ ─── L ─── v_L(t) │ ─────────────┴── ``` ## 微分方程式 キルヒホッフ: $Ri(t) + L\dfrac{di(t)}{dt} = E$ → $\displaystyle \dfrac{di(t)}{dt} + \dfrac{R}{L}i(t) = \dfrac{E}{L}$ あるいは $\displaystyle \dfrac{di(t)}{dt} = \dfrac{E}{L} - \dfrac{R}{L}i(t)$ 変数分離して解く:

i(t) = \dfrac{E}{R}{1 - e

## 各素子の電圧・電流 初期条件:$t=0$ で $i(0)=0$

\begin{aligned}
i(t) &= \dfrac{E}{R}{1 - e^{-Rt/L}} \quad\text{(電流)}\[4pt]
v_R(t) &= R,i(t) = E{1 - e^{-Rt/L}} \quad\text{(抵抗の電圧)}\[4pt]
v_L(t) &= L\dfrac{di(t)}{dt} = E,e^{-Rt/L} \quad\text{(コイルの電圧)}
\end{aligned}

## 時定数 $\tau = L/R$ RL回路でも時定数は同じ役割。ただしRCとは逆で、$\tau$ が大きいほど電流の立ち上がりが遅い。 --- # RCとRLの比較 | | RC回路(C出力) | RL回路(R出力) | |---|---|---| | 時定数 | $\tau = CR$ | $\tau = L/R$ | | $v_{out}(t)$ | $E(1-e^{-t/\tau})$ | $E(1-e^{-t/\tau})$ | | 電流 $i(t)$ | $\dfrac{E}{R}e^{-t/\tau}$(減衰) | $\dfrac{E}{R}(1-e^{-t/\tau})$(増加) | **電流の時間変化が逆転**しているのがポイント! --- # 周波数特性との関係(つながり)

f_c = \dfrac{1}{2\pi CR} = \dfrac{1}{2\pi\tau} \quad\text{→ 遮断周波数と時定数は逆数の関係!}

- **低域通過フィルタ (LPF)** = **積分回路** - $f \gg f_c$($t \ll \tau$)のとき:$v_C(t) \approx \dfrac{1}{CR}\int e(t)dt$ - **高域通過フィルタ (HPF)** = **微分回路** - $f \ll f_c$($t \gg \tau$)のとき:$v_R(t) \approx CR\dfrac{de(t)}{dt}$ > 今までの「周波数応答(フィルタ)」と今回の「時間応答(過渡現象)」は、時定数 $\tau$ を介してつながってる! --- # RLC直列回路のステップ応答(2次系) 回路: ``` ──╲── R ──── L ────┬── │ ─── C ─── │ ────────────────────┴── ``` ## 微分方程式 キルヒホッフ: $v_L + v_R + v_C = E$

L\dfrac{di(t)}{dt} + Ri(t) + \dfrac{1}{C}\int i(t)dt = E

$i(t) = \dfrac{dq(t)}{dt}$ を使うと:

L\dfrac{d^2q(t)}{dt^2} + R\dfrac{dq(t)}{dt} + \dfrac{1}{C}q(t) = E

$q(t) = Cv_C(t)$ より $v_C(t)$ の式にもできる。 ## 特性方程式(斉次微分方程式の解) $i(t) = ke^{st}$ と仮定 → $Ls^2 + Rs + \dfrac{1}{C} = 0$

s = \dfrac{1}{2L}\left(-R \pm \sqrt{R^2 - \dfrac{4L}{C}}\right)

## 減衰係数と固有角周波数 - **減衰係数**: $\displaystyle \alpha = \dfrac{R}{2L}$ - **固有角周波数**: $\displaystyle \omega_0 = \dfrac{1}{\sqrt{LC}}$ → $s = -\alpha \pm \sqrt{\alpha^2 - \omega_0^2}$ ルートの中身の符号で**3パターン**! --- ## 3つの減衰モード ### ① 過減衰 (Overdamped) — $R > 2\sqrt{L/C}$ 特性根:**相異なる2つの実根** $s_1 = \alpha + \beta$, $s_2 = \alpha - \beta$

i(t) = \dfrac{E}{L}\dfrac{1}{\beta}e^{\alpha t}\sinh(\beta t)

振動せず、ゆっくり減衰。定常状態になるまで時間がかかる。 ### ② 臨界減衰 (Critically Damped) — $R = 2\sqrt{L/C}$ 特性根:**重根** $s = \alpha$

i(t) = \dfrac{E}{L},t,e^{\alpha t}

振動せず、最も速く定常状態に落ち着く。 ### ③ 不足減衰 (Underdamped) — $R < 2\sqrt{L/C}$ 特性根:**共役複素根** $s = \alpha \pm j\beta$

i(t) = \dfrac{E}{L}\dfrac{1}{\beta}e^{\alpha t}\sin(\beta t)

振動(リンギング)しながら減衰。定常状態になるまで時間がかかる。 --- ## 3パターンの比較 | | 過減衰 | 臨界減衰 | 不足減衰 | |---|---|---|---| | 条件 | $R > 2\sqrt{L/C}$ | $R = 2\sqrt{L/C}$ | $R < 2\sqrt{L/C}$ | | 根 | 異なる実根2つ | 重根 | 共役複素根 | | 波形 | 振動なし・遅い | 振動なし・最速 | 振動しながら減衰 | | 電流の様子 | ダラダラ落ち着く | ピタッと落ち着く | ビョンビョン揺れる | --- # 第10章 ダイオードを含んだ回路およびその動作点 ## ダイオードとは **ダイオード**:電気の流れを「一方通行」にする性質を持った素子(半導体) | 端子 | 名称 | 型 | |---|---|---| | アノード (Anode) | 陽極 | p型 | | カソード (Cathode) | 負極 | n型 | 回路記号: ``` ──▶|── A K ``` ### バイアス方向 - **順方向電圧 (Forward Bias)**:アノード側 ⇒ 正電圧、カソード側 ⇒ 負電圧 - → 電流が流れる(≈ 短絡) - シリコンダイオードの順方向電圧降下:$V_F \approx 0.7\,\text{V}$ - **逆方向電圧 (Reverse Bias)**:アノード側 ⇒ 負電圧、カソード側 ⇒ 正電圧 - → 電流が流れない(≈ 開放) --- ## ツェナーダイオード (Zener Diode) 通常のダイオードとは逆に、**逆方向電圧**で利用する特殊なダイオード。 - 閾値電圧(ツェナー電圧)を超えると**急激に電流が増加** - 閾値電圧以上の電気抵抗は極めて小さい - **降伏電圧(ツェナー電圧)$V_Z$** で一定電圧を維持 → **定電圧源**として使える --- ## 負荷線 (Load Line) と動作点 (Operating Point) ### 回路方程式 ダイオードと抵抗 $R$ の直列回路に電源 $E$ を接続:

\begin{aligned}
E &= V_D + R,I_D \
I_D &= \frac{E - V_D}{R}
\end{aligned}

### 負荷線 - $I_D = (E - V_D)/R$ の直線を **負荷線** と呼ぶ - $V_D$-$I_D$ 平面上に描く - $V_D = 0$ のとき $I_D = E/R$(縦軸切片) - $I_D = 0$ のとき $V_D = E$(横軸切片) ### 動作点 **負荷線** と **ダイオードの電流-電圧特性曲線** の交点 → **動作点 (Q点)** 動作点の $V_D$, $I_D$ が実際の回路の動作状態を表す。 --- ## 数値例(ダイオード回路の解析手順) ダイオード回路は **ON / OFF を仮定して解く** のが基本! ### 手順 1. ダイオードが **ON(導通)** か **OFF(非導通)** かを仮定 2. 仮定に基づいて回路を単純化 - **ON** → $V_F \approx 0.7\,\text{V}$ の電圧源(または短絡)とみなす - **OFF** → 開放(断線)とみなす 3. 回路方程式を解く 4. 仮定の整合性を確認 - ONと仮定 → 実際に $V_D \ge V_F$ になっているか? - OFFと仮定 → 実際に $V_D < V_F$ になっているか? 5. 整合しない場合は逆の仮定で再計算 ### 例題 ``` ── R1 ──┬── R2 ── E D ────────┴──────── ``` $E = 2\,\text{V}$, $R_1 = 1\,\text{k}\Omega$, $R_2 = 1\,\text{k}\Omega$ のとき: **① OFFを仮定** - $D$ を開放 → $V_b = E \times \dfrac{R_2}{R_1 + R_2} = 2 \times \dfrac{1}{1+1} = 1.0\,\text{V}$ - $V_b = 1.0\,\text{V} > V_F$ → **ONのはず** → 仮定不適合 **② ONを仮定** - $D$ の両端電圧を $V_F = 0.7\,\text{V}$ に固定 - $V_b = V_F = 0.7\,\text{V}$ - $I_1 = \dfrac{E - V_b}{R_1} = \dfrac{2 - 0.7}{1\,\text{k}\Omega} = 1.3\,\text{mA}$ - $I_2 = \dfrac{V_b}{R_2} = \dfrac{0.7}{1\,\text{k}\Omega} = 0.7\,\text{mA}$ - $I_D = I_1 - I_2 = 1.3 - 0.7 = 0.6\,\text{mA}$(正 → ONで整合) --- ## 整流回路 (Rectifier Circuits) ### 半波整流回路 (Half-Wave Rectifier) - ダイオード1個で構成 - 入力の**正の半周期だけ**を通す - 負の半周期はカット ``` 入力: ~~~~ ~~~~ / \ / \ / \ / \ 出力: ~~~~ / \ / \ ``` ### 全波整流回路 (Full-Wave Rectifier) - 複数ダイオード(またはブリッジ構成)で構成 - 入力の**正負両方の半周期を同じ方向の出力**に変換 - 半波よりリップルが小さい ``` 入力: ~~~~ ~~~~ / \ / \ / \ / \ 出力: ~~~~~~~~ /\ /\ / \/ \ ```